メタバースやNFTが一般に認知されるにあたり、質問が増えたため追加。
VRChatと経済圏の関係性について
VRChatには現状決済機能は持ち合わせておらず、アバターやワールド、イラストコミッションなどの依頼はすべてVRChatの外で行われている。したがってVRChatの運営はこれらのサービスについては直接関知しない。
ただし、まったく関知しないわけではなくバーチャルマーケットやアバターミュージアムのように経済圏の支援に協力する様子はある。
クリエイター支援目的での決済機能の導入はロードマップ上に存在するものの、いつどのように実装されるかどうかについての予定は見えるうちには上がっていない。
VRChat周辺の経済圏で使用される通貨について
現時点では、ほとんどすべての取引が法定通貨(いわゆるフィアット。日本国内であれば日本円)によって行われている。
仮想通貨を必要とすると思った人。期待させてごめんなさい。
独自の仮想通貨が使用されていることはなく、経済圏の成立にあたっては一般的な貨幣経済との違いは大きくない。
単に日本円で商品を購入し、日本円で投げ銭を行い、日本円で報酬を受け取っている。当然のことながら、雑所得や事業所得として扱い、通常の取引と同様の税務処理も行われている。
日本国外であればその国の法定通貨に変わるだけ(例えば米国であればアメリカドル)で、やはり専用の仮想通貨が用いられるわけではない。
現状、音楽や映画の配信と同じような仕組みと考えると良い。
ただし、規模は小さく個人間での取引が多いことがポイント。2021年頃からはツクルノモリをはじめとする法人によるアバター販売が増えてきている。

VRChatやその配信プラットフォームであるSteamはNFTをはじめとする仮想通貨の仕組みに対しては否定的で、少なくともこれらの機能が導入される可能性はほぼない。
もしかすると、VRChatやSteamの外ではあるかもしれないが深く考える必要はなさそう。
VRChatから見たNFTとブロックチェーンの見解
日本時間2022年1月29日早朝に発表。
NFTで使用権利を得て3DモデルやNFTアートをVRChatに持ってくることは可能。
ただしVRChatにそのような機能を実装するつもりはないし、宣伝や勧誘を行ったり勝手にサービスを展開することは禁止。
閑話休題。リンデンドルについて
VRChatには直接関係しないものの、通貨上の話から多少の言及にとどめておく。
遥か昔の2003年頃から存在し(VRChatから見れば大先輩!)、リンデンラボにより運営されている”Second Life”と呼ばれるメタバースがあるが、こちらにはある程度の貨幣経済の仕組みが導入されている。
ここで使用される仮想通貨は”リンデンドル(Linden Dollar)”と名付けられている。リンデンドルはリンデンラボによって発行されている。
かつては比較的自由に取引が行われており、他の仮想通貨との交換も比較的自由にできてはいた。
その後お金について時代の流れで厳しくなった。現在はリンデンラボの子会社として、決済会社のTiliaを通して決済する仕組みに変更されている。
なおこのときにリンデンドルはドルペッグ制に変更され、現在は1ドル=320リンデンドルの為替レートに固定された上で取引がなされている。PayPal経由でリアルマネーとの入出金が可能。
送金速度について
日本円で取引を行うので、取引が約定しても直ちに送金が成立するわけではない。
しかし極端に遅いわけではなく、よほど切羽詰まっていないのでない限りは一般的な支払いサイトで取引される。
Amazonの「欲しいものリスト」、通称「干し芋」を公開して現物でプレゼントを行う場合があり、この場合は一般的なネットショッピングと同程度の日数で配送される。
アバターに仕込まれたアイテムについて
アバターギミックとして武器や魔法を備えているアバターを見たことがあるとは思われるが、これはアバターの一部であって、アイテムではない。またワールドに置かれているワールドオブジェクトも同様に、ワールドの一部にすぎない。


アイテム単位で切り離して取り扱う仕組みは、現状VRChatには用意されていない。複数のアバターに同じギミックを入れたい場合は、アバターの数だけ導入操作を繰り返す必要がある。
アバターの質問は以前公開した以下の記事を参照されたい。
VRChatのゲーム内で使用される通貨(UdonChips)について
VRChatでは、一部のワールドにUdonChipsと呼ばれる通貨システムが用意されている。
これは持ち点のようなもので、法定通貨や仮想通貨と交換することはできない。
いわばゲーム性を高めるための得点システムで、有効期間はインスタンス(つまり、立てられた部屋)が保持される期間にのみ限られ、価値を持って取引するためのものではない。
メタバースとNFT、仮想通貨は関係あるの?
直接の関係はない。
それぞれは独立した技術であり、無理に組み合わせて使用するようなものでもない。
組み合わせて使用することもできるが、技術的に必須のものではないのでNFTや仮想通貨と縁のないメタバースは存在し得る。
NFTは結局何だった?
説明すると非常に長いものになるので、詳しく書かれている以下の記事を参照されたい。



NFTはその取引記録を証明するが、大元のアートの妥当性は保証しない。
従って、トークン発行体の信用リスクを背負うことになる。仮想通貨そのものの信用リスクに加え、トークンの発行体の状況次第でその価値が変動および滅失する可能性がある。
信用リスクとは?と思った場合は、一般的な金融用語的な意味で以下を参照されたし。
今回メインに据えているVRChatではNFT機能は実装されておらず、今後も導入される予定はない。